「安否を憂慮する者」の意義

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判例 最昭62年3月24日刑集41巻2号173頁

事案の概要

 被告人は、某相互銀行の代表取締役の乗車する社長車を襲い、代表取締役をホテルに連れ去り監禁して、畏怖している代表取締役を介して、相互銀行の専務取締役らに「現金3億円を準備しろ」などと告げて、身代金を要求しました。専務取締役らが「略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者」にあたるかどうか問題となりました。

決定要旨

 刑法225条の2にいう近親者その他被拐取者の安否を考慮する者には、単なる同情から被拐取者の安否を気づかうにすぎないとみられる第三者は含まれないが、被拐取者の近親でなくとも、被拐取者の安否を親身になって憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者はこれに含まれる。相互銀行の代表取締役社長が拐取された場合における同銀行幹部らは、被拐取者の安否を親身になって憂慮するのが社会通念上当然とみられる特別な関係にある者に当たる。

コメント

 決定要旨にある通り、親や子供のような近親者以外でも特別な関係のある場合には、安否を憂慮する者にあたります。これらの者に対して身代金を要求する目的で略取又は誘拐した場合には、同罪が成立することとなります。

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